「消費カロリーを増やせば痩せる」
という話は
よく聞きます。
たしかに
体脂肪を減らすには
エネルギー収支が大事です。
でも僕は
この話を見るたびに
少し立ち止まりたくなります。
消費カロリーって
何のことを言っているのか。
運動で使ったカロリーなのか。
1日の総消費なのか。
日常の歩きや家事も入っているのか。
食事を消化吸収するコストも入っているのか。
ここを分けないまま
「もっと消費を増やそう」
と言うと
話がけっこう変になります。
たとえば
ジムで300kcal使った。
でもその後
疲れてずっと座っていた。
食欲が増えて
いつもより200kcal多く食べた。
日中の歩数も減った。
こうなると
「運動したのに痩せない」
ということが普通に起きます。
運動が無意味
という話ではありません。
ただ
消費カロリーを
運動だけで見ると
見落とす場所があるんですよね。
この記事では
TDEE、つまり1日の総消費エネルギーの中身を
できるだけ日常で使える形に分けていきます。
今回はこの順番で見ます。
- TDEEとは何か
- 消費カロリーを4つの箱で見る
- EATとNEATの違い
- TEFを盛りすぎない方がいい理由
- 運動を増やしても体重が動かない理由
- 停滞したときにどこを見るか
この記事の目的は
用語を覚えることではありません。
「自分の消費は
どこで増えて
どこで消えているのか」
を見やすくすることです。
TDEEは、1日全部込みの消費です
まずTDEEです。
TDEEは
Total Daily Energy Expenditureの略です。
日本語にすると
1日の総消費エネルギーです。
ここで大事なのは
TDEEは運動だけの数字ではない
ということです。
1日の中で使うエネルギー全部が
TDEEに入ります。
寝ていても使うエネルギー。
座っていても使うエネルギー。
食事を消化吸収するエネルギー。
歩く、立つ、家事をするエネルギー。
筋トレやランニングで使うエネルギー。
こういうものが全部入ります。
だから
「今日は運動で300kcal使った」
という数字だけを見ても
1日の総消費までは分かりません。
その300kcalが
1日の中でちゃんと残っているのか。
それとも
食事や日中の活動量低下で
消えているのか。
ここまで見ないと
ダイエットでは判断しにくいです。
消費カロリーは、4つの箱で見ると分かりやすい
TDEEの中身は
細かく分けようと思えば
いろいろ分けられます。
でも
ダイエットで使うなら
まずは4つで十分です。
- 安静時の消費
- 食事に伴う消費
- 運動による消費
- 運動以外の日常活動
この4つです。
少し専門用語で書くと
こうなります。
- RMR / REE:安静時の消費
- TEF / DIT:食事に伴う消費
- EAT:筋トレやランニングなどの運動
- NEAT:歩く、立つ、家事などの日常活動
最初から
全部の英語を覚えなくてもいいです。
大事なのは
消費カロリーを
ひとつの大きなかたまりで見ないことです。
土台の消費。
食事で使う消費。
運動で使う消費。
日常活動で使う消費。
この4つに分けるだけで
「痩せない理由」はかなり見やすくなります。
安静時の消費は、体を保つための土台です
まず
安静時の消費です。
これは
何もしていないように見えるときでも
体を保つために使っているエネルギーです。
心臓を動かす。
呼吸する。
体温を保つ。
臓器を働かせる。
細胞の働きを保つ。
こういう
生きているだけで必要な消費ですね。
RMRやREEは
この安静時の消費を表す言葉として使われます。
基礎代謝という言葉に近いですが
厳密なBMRとは条件が違う場合もあります。
ここは
前の記事で詳しく分けました。
今回の記事では
「安静時の消費は
1日の消費の土台になる箱」
くらいで大丈夫です。
ただし
ここで注意したいことがあります。
体重が数日止まっただけで
すぐに
「代謝が落ちた」
と決めないことです。
安静時の消費は大事です。
でも
日常で急に正確に見抜くのは難しいです。
停滞したときは
安静時の消費を疑う前に
食事の抜け、NEAT低下、体重の水分ノイズを
先に見た方がいい場面が多いです。
TEFはある。でも主役にしない
次に
食事に伴う消費です。
TEFは
Thermic Effect of Foodの略です。
DIT
Diet-Induced Thermogenesis
と呼ばれることもあります。
簡単に言うと
食べたものを消化、吸収、代謝するために
体が使うエネルギーです。
食事をすると
その食事を処理するためにも
少しエネルギーを使います。
これがTEFです。
ここまでは大事です。
ただ
TEFを大きな武器みたいに扱うと
少し危ないです。
「これを食べれば燃える」
「食べる回数を増やせば消費が増える」
「TEFで大きく痩せる」
みたいな話には
僕はあまり乗りません。
TEFは存在します。
でも
ダイエットで体脂肪を落とす主役にするには
弱いです。
食事内容によって
TEFの出方は変わります。
たんぱく質は
脂質よりTEFが大きいとされます。
ただ
だからといって
TEFだけで大きな赤字を作る
という考え方は現実的ではありません。
TEFは
ある。
でも主役ではない。
日常で使うなら
このくらいの距離感がちょうどいいと思います。
EATは、意図してやる運動です
次はEATです。
EATは
Exercise Activity Thermogenesisの略です。
筋トレ。
ジョギング。
ランニング。
スポーツ。
ジムでの有酸素。
自分で
「今日は運動した」
と認識しやすい活動です。
ダイエットの話で
消費カロリーと言われると
多くの人はこのEATを思い浮かべます。
運動で何kcal使った。
ジムで何分走った。
ウォーキングで何歩歩いた。
このあたりですね。
もちろん
EATは大事です。
筋トレは筋肉を守るうえで重要ですし
有酸素も体力や心肺機能
消費の上乗せとして役に立ちます。
ただし
EATだけを見て
消費カロリーを語ると
見落とすものがあります。
それがNEATです。
NEATは、運動以外の日常活動です
NEATは
Non-Exercise Activity Thermogenesisの略です。
これは
筋トレやランニングのような運動ではない
日常活動で使うエネルギーです。
たとえば
歩く。
立つ。
家事をする。
通勤する。
階段を使う。
姿勢を保つ。
仕事中に移動する。
ちょこちょこ動く。
こういう細かい動きがNEATです。
ひとつひとつは小さいです。
でも
1日の中で積み上がると
普通に差になります。
僕としては
ダイエットでかなり見落とされるのは
ここだと思っています。
ジムで運動している。
でもそれ以外は座りっぱなし。
有酸素を増やした。
でも疲れて階段を使わなくなった。
筋トレを頑張った。
でもその後の活動量が落ちた。
こうなると
EATで増やした分が
NEAT低下で一部消えます。
つまり
運動はしているのに
1日全体の消費は思ったほど増えていない
ということが起きます。
ここを見ないまま
「もっと運動しよう」
と進むと
さらに疲れてNEATが落ちることもあります。
だから
運動しているのに痩せない人ほど
NEATを一度見た方がいいです。
運動を増やしても、総消費が直線的に増えるとは限りません
直感的には
運動を増やせば
その分だけTDEEも増える
と思いやすいです。
たしかに
運動を増やせば
その運動中の消費は増えます。
でも
1日の総消費が
その分だけきれいに増えるとは限りません。
理由はいくつかあります。
- 疲れて日中の活動量が落ちる
- 座る時間が増える
- 歩数が減る
- 食欲が増える
- 体が他の消費を抑える方向に寄る可能性がある
つまり
運動を足した分が
そのまま体重減少として出るわけではありません。
運動したから
必ずその分だけ痩せる。
そういう単純な足し算では
現実を読み間違えます。
ここでも
運動が無意味という話ではありません。
見る場所が違う
という話です。
EATは増えた。
でもNEATは落ちていないか。
食欲は増えていないか。
睡眠は削れていないか。
体重は水分で見えにくくなっていないか。
ここまで見て
はじめて
運動を増やした意味が読めます。
PALは、活動水準を見る目安です
少し補足で
PALにも触れておきます。
PALは
Physical Activity Levelの略です。
活動水準を見るための考え方です。
ざっくり言うと
1日の総消費が
基礎代謝の何倍くらいかを見る指標です。
たとえば
同じ基礎代謝でも
座りっぱなしの人と
よく歩く人では
1日の総消費は変わります。
その活動の違いを見るために
PALという考え方があります。
ただ
個人のダイエットで
PALを細かく信じすぎる必要はありません。
計算上は便利ですが
実際の活動量にはかなり個人差があります。
同じ「普通に活動している」でも
歩数、立位時間、仕事、移動手段
家事、運動習慣は人によって違います。
だから
PALは目安です。
最初の仮置きとして使い
実際の体重推移や活動量を見て
調整するものだと思った方がいいです。
TEFを盛りすぎると、見る場所を間違えます
ここで
よくある誤解を少しまとめます。
まずTEFです。
TEFがあるから
食べれば食べるほど燃える。
これは違います。
食事には
食事に伴う消費があります。
でも
食べたエネルギーの方が
基本的には大きいです。
TEFを理由に
摂取量を増やしていい
という話にはなりません。
また
たんぱく質のTEFが高いから
たんぱく質だけ増やせば痩せる
という話でもありません。
たんぱく質は大事です。
でも
総摂取量、PFC、食事の続けやすさ
筋トレ、睡眠まで含めて見ます。
TEFは補助。
主役は総量と継続です。
ここを間違えない方がいいです。
NEATを根性だけで考えない
次にNEATです。
NEATは
「もっと動けばいい」
だけで片づけると
少し浅くなります。
NEATは
本人のやる気だけで決まりません。
仕事が座りっぱなしなのか。
移動が車中心なのか。
家事の量が多いのか。
疲れているのか。
睡眠が足りているのか。
減量中でだるくなっていないか。
こういう条件の影響を受けます。
なので
NEATが低い人に
「気合いで動け」
と言っても続きにくいです。
見るべきなのは
その人の日常のどこで
動く機会が消えているかです。
階段を使う。
食後に少し歩く。
座りっぱなしを切る。
買い物で歩く。
立って作業する時間を作る。
こういう形で
生活の中に戻す方が現実的です。
NEATは
小さい動きの積み上げです。
だからこそ
気合いより仕組みで増やした方が
続きやすいです。
停滞したときは、どの箱が動いたかを見る
体重が動かないとき
いきなり
「代謝が落ちた」
と考える人は多いです。
でも
先に見る場所があります。
まず体重の見方です。
外食、塩分、糖質、便通
筋トレ後の張り、睡眠不足で
一時的に見えにくくなっていないか。
次に食事です。
飲み物、調味料、つまみ食い
週末、外食、アルコールで
戻っていないか。
次にNEATです。
運動はしているけど
日中の歩数や立っている時間が
減っていないか。
座っている時間が増えていないか。
次に睡眠です。
寝不足で
食欲が強くなったり
活動量が落ちたりしていないか。
それでも
数週間単位で明らかに動かないなら
摂取量、PFC、運動量
減量ペースを見直します。
この順番の方が
無駄に削る事故は減ります。
TDEEを分けて見る意味は
ここにあります。
「消費が落ちた」
で終わらせるのではなく
どの箱で変化が起きたのかを見る。
これが大事です。
よくある質問
消費カロリーを増やすなら、運動を増やせばいいですか?
運動を増やすのは
選択肢のひとつです。
ただし
運動を増やした分
NEATが落ちていないかも見た方がいいです。
運動後に座る時間が増える。
歩数が減る。
食欲が強くなる。
こうなると
思ったほど体重が動かないことがあります。
TEFを上げれば痩せますか?
TEFはあります。
ただ
TEFだけを主役にして
体脂肪を落とそうとするのは
あまりおすすめしません。
まずは
総摂取量、PFC、活動量
睡眠、継続の方を見た方がいいです。
NEATは歩数だけ見ればいいですか?
歩数は分かりやすい指標です。
でも
NEATは歩数だけではありません。
立っている時間
家事
階段
仕事中の移動
座りっぱなしを切ることも含みます。
歩数は入口として使い
座位時間や立位時間も見られると
より読みやすいです。
代謝が落ちたかどうかは分かりますか?
日常で正確に見抜くのは難しいです。
だから
最初から安静時代謝の低下と決めず
体重の見方、摂取量の抜け
NEAT、睡眠を先に見ます。
本当に長く動かないなら
そこで摂取量や活動量を見直します。
まとめ
消費カロリーは
運動だけで決まりません。
TDEEは
1日の総消費エネルギーです。
その中には
安静時の消費
食事に伴う消費
運動による消費
運動以外の日常活動が入ります。
ダイエットで見落としやすいのは
運動以外の日常活動です。
ジムに行っていても
その後ずっと座っている。
有酸素を増やしたけど
疲れて歩数が減る。
食事を減らしたけど
だるくて立つ時間が減る。
こうなると
作ったはずの赤字が
日常のどこかで消えることがあります。
TEFはあります。
でも主役ではありません。
EATは大事です。
でもEATだけを見ても足りません。
NEATは地味です。
でも結果に関わります。
だから
消費カロリーを見るときは
「運動したか」だけではなく
どの箱が増えて
どの箱が減ったのかを見ます。
そこが見えると
「運動してるのに痩せない」
の中身がかなり分かりやすくなります。
次に読むなら
ここまでが
TDEEの中身の話です。
消費カロリーは
安静時の消費、食事に伴う消費
運動、日常活動に分けて見ると
かなり読みやすくなります。
ここまで読んで
「運動しているのに痩せない理由を
自分の生活に当てはめて見たい」
と思った人はこちらをどうぞ👇
体重の見方、食事、NEAT、睡眠
停滞したときの確認順まで
まとめて持ちたい人はこちらです👇
まずは
「どの箱で帳尻が消えているのか」
を見るところからで大丈夫です。
迷ったらプロフィールからどうぞ。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
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参考文献・参考資料
National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine. Dietary Reference Intakes for Energy. 2023.
公的資料。TEEをRMR、TEF、身体活動エネルギー消費で整理しており、TDEEの基本構造を理解するための土台として参照。
FAO/WHO/UNU. Human Energy Requirements. Report of a Joint FAO/WHO/UNU Expert Consultation. 2001.
国際機関の報告書。BMR、TEE、PALなど、エネルギー必要量と活動水準を考える土台として参照。
Westerterp KR. Diet induced thermogenesis. Nutr Metab (Lond). 2004;1:5.
レビュー。食事誘発性熱産生、つまりTEF/DITの考え方を整理した論文。食事内容や測定条件によって値が変わるため、TEFを過大評価しない前提で参照。
Levine JA. Non-exercise activity thermogenesis (NEAT). Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2002;16(4):679-702. PMID: 12468415.
レビュー。NEATは、睡眠・食事・スポーツ様運動以外で使うエネルギーとして整理される。歩行、立位、家事、姿勢保持などの日常活動を理解するための土台。
Levine JA, Eberhardt NL, Jensen MD. Role of nonexercise activity thermogenesis in resistance to fat gain in humans. Science. 1999;283(5399):212-214. PMID: 9880251.
過食介入研究。過食時のNEAT変化には個人差があり、脂肪増加の差と関係したことを報告。対象数は多くないため、全員に同じ形で当てはめるものではない。
Pontzer H, Durazo-Arvizu R, Dugas LR, et al. Constrained Total Energy Expenditure and Metabolic Adaptation to Physical Activity in Adult Humans. Curr Biol. 2016;26(3):410-417. PMID: 26832439.
観察研究。身体活動量が増えても、総消費エネルギーが直線的に増え続けるとは限らない可能性を示した研究。因果や一般化には注意が必要。